なんとも不思議な感触の幻想ミステリだ。本書を読む者は、始終言い知れない『歪み』を感じることになる。まさしく本書は『信用できない語り手』の物語なのだ。なのに一見したところでは、その不安の正体が見定められないようになっている。そしてラスト、凄惨であまりにも静謐なラストの先には永遠に続く循環が待っている。
悪意や狂気をストレートに感じさせない筆勢に惚れ惚れしてしまう。どうしたら、こういう風に書けるのか。描かれていることはこんなにも残酷で爛れているのに、その匂いを感じないのはどうしたわけか?
おそるべし、皆川博子である。
この人の本は、読む毎に驚きと興奮を与えてくれる。そこに広がる世界は尋常でなく恐ろしいのに、どうしても魅了されてしまう。悪魔に魅入られたら、こういう感じなのだろうか。って、それは失礼か^^。本書はいってみればクローズド・サークルのお話なのだ。孤島が舞台なのだから、王道だろう。だが並みの作家ならそこで恐怖を芯に据えた物語を紡ぐのだろうが、皆川博子は恍惚を描くのである。狂気に彩られた一人称。孤島に集められた放埓な少女たち。漂う妖気。血が流され、夢がくり返され、夜がまたやってくる。だがそこにはうっとりとした陶酔感が横溢し、恐怖よりも恍惚が勝るのである。本書が特異な点はそこにある。また、それは両刃の剣で本書の評価を隔てる大きな壁でもある。どうか吟味していただきたい。
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聖女の島 (講談社ノベルス ミB- 4 綾辻・有栖川復刊セレクション) 新書 – 2007/10/1
皆川 博子
(著)
講談社ノベルス25周年記念復刊!
- 本の長さ181ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2007/10/1
- ISBN-104061825518
- ISBN-13978-4061825512
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2007/10/1)
- 発売日 : 2007/10/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 181ページ
- ISBN-10 : 4061825518
- ISBN-13 : 978-4061825512
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,533,580位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2011年6月23日に日本でレビュー済み
不良少女更生の目的で、修道会によって絶海の孤島に建てられた厚生施設。修道会から派遣され、その運営に当たる女園長は自らの経営失敗を自覚して再建のために修道女を島に呼ぶ。そこで展開される幻想的で矛盾に満ち溢れた謎の物語。若く荒んだ少女達が集う島には凄惨さと性の匂いが充満している......。
一応、魅力的な設定ではあるが、描き方がベタ過ぎて、作者の狙いがすぐに分かってしまう。解説に"超絶技巧"とあるのが虚しい。期待して手に取った割には肩透かしを喰った感じ。また、作中で「人間交差点」を批判するシーンがあるが、こんな事が許されるのであろうか ? 妖しいムードの出し方は巧みだと感じたが、構想・構成にもう一工夫欲しい所だと思った。
一応、魅力的な設定ではあるが、描き方がベタ過ぎて、作者の狙いがすぐに分かってしまう。解説に"超絶技巧"とあるのが虚しい。期待して手に取った割には肩透かしを喰った感じ。また、作中で「人間交差点」を批判するシーンがあるが、こんな事が許されるのであろうか ? 妖しいムードの出し方は巧みだと感じたが、構想・構成にもう一工夫欲しい所だと思った。